創刊特別号:女子ゴルフの“裏側”を現場から──浅井咲希の告白から見えたもの
記念すべき第1回目は、女子ゴルフの現場からのお話です。先日、「CAT Ladies」の取材現場へ。印象的だったのは浅井咲希選手が、プロキャディーである夫の不倫騒動を経て初めて公の場で心境を語った姿でした。報道から見えない裏側に迫ります。
ツアー通算1勝の浅井選手が「CAT Ladies」(大箱根カントリークラブ)に出場しました。今季レギュラーツアーは主催者推薦で初出場、しかも19年に初優勝を飾ったコース。とはいえ、彼女がここに立つことができたのを“当然”と見るのはおかしな話です。
なぜなら、夫である栗永遼キャディーのトリプル不倫スキャンダルという辛い背景を抱えていたからです。今季シーズン開幕前に『週刊文春』の報道で明るみに出た騒動は、浅井選手に深刻な精神的打撃を与えました。4月に出場した下部のステップ・アップ・ツアー「フンドーキン・レディース」ではプレー中に嘔吐し、途中棄権を余儀なくされたほどです。
彼女がどんな心境でこの舞台に立ったのか――。筆者としてはスキャンダルを大袈裟に報じるつもりはさらさらありませんでしたが、どうしても心境を聞いておく必要があると思ってしました。大会前日に浅井の取材を運営側にお願いすると「お聞きしたいメディア(記者)は、どうやらキムさんだけのようです」と。
つまり、他社メディアは彼女に話を聞くのをためらっていたり、敬遠しようとしていたようです。「今さら何を聞くのか」というのが理由です。もちろん、置かれた境遇を考えた場合、「今はそっとしておくべき」というのも間違った判断ではないでしょう。
ただ、表舞台に登場したからには、メディアの前に立って質問をなげかけられるというのも選手は認識しているに違いない。筆者はそう思いました。運営側に取材のお願いをし、筆者1人だけでも話を聞こうと思っていました。
しかし蓋を開けてみると、結果的に現場にいた記者が全員、彼女に囲み取材するという異様な光景に。浅井選手が移動してくると、他社の記者たちもぞろぞろと駆けつけ、“おこぼれ頂戴”というわけです。
「周囲の支えで精神的にも安定」
浅井選手は口ごもることもなく、これまでの苦しみや現在の心境を正直に話していました。
「今年、棄権した試合はプレー中に吐いたり、自律神経がちょっと狂ったりして…。今もドーピングに引っかからないお薬を出してもらっています。それを飲みながら試合に出ているので、(体調に)影響がないわけではないです。当初はコースに行って体調が悪くなることもあったのですが、それこそスポンサーさんが『コースに行って克服しよう』と誘ってくれたり、今週もレギュラーツアーに出ている選手が定期的に連絡をくれたりしました。周囲の人たちが温かく接してくれたので、普通にゴルフ場に来て、ゴルフを頑張りたいと思えるところまで来ることができました。周りのおかげで、精神的にも復活してきたかなと思います」
今季は下部ツアーが主戦場で、7試合中5回予選落ち、1回棄権という苦しい結果。カストロール・レディースで57位になった1試合だけ予選通過を果たしていますが、ここに来て「やっとゴルフが楽しくなってきた。お世話になった人たちに恩返ししたい」と前を向くその姿には、胸を打たれるものがありました。
プライベートでは2歳の長男を抱え、産休からの復帰を果たして間もない状況。家族や親族の協力を得ながら、厳しいプロ生活と子育てを両立させる日々です。終始、話している表情はとても明るく、こうしてレギュラーツアーに戻って来られたことが本当に楽しく、嬉しそうなのも印象的でした。
それに子どものためにも前を向いて頑張らなければならない。ママさんゴルファー、強しです。
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